就業規則の作成前に知っておくべき5つのこと

開業、企業後、ある程度事業が軌道に乗った時、従業員を雇うようになるかと思います。

考え方、価値観が異なる多様な従業員が増えてくると、従業員間での不公平が生じないように社内でのルールが必要になります。これが就業規則です。

就業規則は、労働条件など基本的な会社のルールを定め、従業員とのトラブルを未然に防ぐという意味でも重要なものです。

お答えします!就業規則の必要性について

2017.03.04

就業規則を作成する際は、次のポイントを抑えましょう。

①就業規則の優先順位

労務管理を行っていく上で、絶対に順守しなければならない法律が労働基準法です。

労働基準法とは、労働条件に関する最低基準を記した法律です。

なので、雇用契約書や就業規則の内容が、労働基準法(労基法)よりも下回ることは許されません。

例えば、雇用契約書で「所定労働時間を10時間とする」と定めた場合、この内容は、労働基準法で定められている法定労働時間8時間を下回るので、無効とされ、労働基準法の内容が適用されます。

また、「個別に同意書などで署名をした」という理由で、労働基準法を下回る内容の労働条件を適用させることは出来ません。

同居の親族や家事使用人、国家公務員、船員には労働基準法が適用されませんので、注意が必要です。

社内規定類での優先順位について

1. 労働基準法 > 2. 労働協約 > 3. 就業規則 > 4. 雇用契約

雇用契約書(労働条件通知書)と就業規則を比べた場合、就業規則が優先されます。

雇用契約書(労働条件通知書)が就業規則の内容を下回っていたら、雇用契約書(労働条件通知書)のその内容に関しては就業規則の内容が適用されます。

逆に、労働基準法を満たし、それ以上の内容を明記した場合、その内容が優先させることになります。

労働基準法は最低基準。それを超える内容を規定する場合は、就業規則や雇用契約書に明記すること

②就業規則を作る目的を考えよう

今このページを見られているということは、就業規則を作成しようかと少し考えられているということかと思います。

では、

なぜ、就業規則を作成しようと考えたのですか??

  • 従業員が10人以上になり、法律で決まっているから?
  • 労使問題を未然に防ぐため?
  • 従業員の権限と責任を明確にし、従業員の士気を高めたい?
  • 仕組みをルール化し、効率よく業務を行い、会社の業績アップに繋げたい?

など、理由や目的はいろいろだと思いますが・・・

「法律で決まっているから」という理由で就業規則を作ろうと考えている会社様は、労働基準法の最低基準を満たした一般的にネットで出回っている就業規則のひな形を少しイジれば事足ります!

↓こちらも参考になります。

モデル就業規則|厚生労働省

でも・・・

せっかく就業規則を作るのであれば、もっと有意義なモノにしませんか!?

少し工夫するだけで、会社の業績アップに繋げることも可能なのです!!

 

「労使問題を未然に防ぐ」という目的も一理あるかと思います。リスクに備えることは、組織にとって重要な事です。

 

でも、思い出して下さい。「会社を立ち上げよう」と決意したときのことを

どんな思いで、会社を立ち上げられましたか?

どんな思いで、従業員を採用されてますか?

 

私は、次のように考えていました。

地域や社会に貢献したい!

従業員も家族のように笑顔でいられる、職場にしたい!

 

従業員が何か悪さをするかもしれない・・・という疑いの目で採用されている方は少ないと思います。

トラブル防止に重点を置いた就業規則は、その考えが従業員にも伝わり、雰囲気が悪くなり、労使間のトラブルが多くなります。

そもそも、社内の雰囲気が良ければ、従業員とのトラブルはほとんど起きません。だいたい従業員間で解決されます。

もちろん、トラブル防止のための条文も記載します!

記載しますが、書き方を工夫するだけです。

③良い就業規則とは

では、良い就業規則とはどのような就業規則なのでしょうか??

私が考えるに、

会社の業績アップに繋がる内容が記載された就業規則だと思います。

以下にポイントを記載するので参考にして下さい。

表現が前向き、肯定的である

従業員が否定的で、嫌々業務を行っていたらどうでしょうか?

会社が業績を上げ、成長するためには、従業員の協力が必要です。そのためには、会社として、「否定的な言葉を使わない」という意識的な取り組みが大切です。

就業規則 には、「~しなければならない」の強制口調、「~してはならない」の否定形の表現が多く用いられるのが一般的です。

これらを「~することができる」や「~できる」、「~する」という表現とし、前向きな雰囲気を醸成していく必要があります。

理想論ではなく、内容が現実的である

せっかく作成るのだから、従業員のために・・・

といって、理想的な社内ルールを作ろうと考えられる社長も少なくありません。

従業員の事を思ってのことで、大変素晴らしいのですが、

就業規則で定めたことが本当に実現可能か?

が重要なのです。

就業規則に一旦定めて、従業員に周知すると、従業員は「私たちの権利だ」と解釈し、期待をします。

就業規則に定めていることが出来ないと、余計な労使トラブルが増えることになるので注意が必要です。

従業員の責任と権限が明確である

会社や組織を効率的に運営し、事業に集中したい場合、従業員の職務を分担し、実行可能な権限を明確にすることで効率的に業務を行うことが出来ます。

逆に、イレギュラーや想定外の事が発生した際は、だれの責任なのかを明記することで、従業員は一定の裁量を持って業務に当たることが出来るのです。

これらの内容を就業規則に定め、

「責任は私が取るから、あなた達は一生懸命自由にやりなさい」

というメッセージを会社として発信することで、前向きでやる気に満ちた組織風土を醸成出来ることと思います。

④就業規則の構成について

絶対的必要記載事項

作成にあたっては絶対に記載しなければならない事項を指します。

  1. 始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇(年次有給休暇、育児休業、生理休暇など)ならびに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合の就業転換に関する事項
  2. 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定方法、計算及び支払いの方法、賃金の締切日および支払日、昇給に関する事項
  3. 退職(解雇事由含む)、定年に関する事由や手続きの事項(退職手当を除く)

上記の内容について記載が無い場合、労働基準監督署に届出ても受理されない場合があるので注意が必要です。

就業規則の内容は、労働基準法を下回ることが出来ません

例えば、「休日を2週間に1回しか与えない」という内容は、労働基準法の「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」という基準を下回るため、仮に規定したとしても、その部分について無効となります。

無効になった内容は、労働基準法の内容が適用されます。

相対的必要記載事項

制度を設けるならば記載しなければならない事項を指します。

  1. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、支払の時期に関すること
  2. 退職手当を除く臨時の賃金等(賞与、臨時の手当等)及び最低賃金額に関すること
  3. 労働者の食費、作業用品費その他の負担に関すること
  4. 安全及び衛生に関すること
  5. 職業訓練に関すること
  6. 災害補償及び業務外の負傷や病気の扶助に関すること
  7. 表彰及び制裁の種類及び程度に関すること
  8. この外、当該事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合においては、これに関すること

上記の内容を実施する場合は、就業規則に定めなければなりません。

例えば、退職金を支払う場合は、就業規則に定めなければなりません。

これも同様で、実施しているのに就業規則に明記していなければ、就業規則が無効となります。

任意的記載事項

その他の記載することが求められていない事項を指します。

  • 社長の熱い思い
  • 経営理念

など、形式は問いませんので、将来どんな会社にしたいのか、どんな人材に育ってほしいのかなど記載しても構いません。

⑤就業規則の効力発生の要件

 就業規則は、ただ作成しただけでは何の効力も発生しません。 

ただの紙切れにすぎないのです。

就業規則の効力を有効にするには

  1. 諸葛労基署長への届出
  2. 従業員代表者または労働組合の代表から意見を聴取する
  3. 従業員へ就業規則を周知する

上記、3点が実施されて初めて有効となります。

さらには、従業員がその就業規則の内容を十分に理解できないのであれば、意味がありません。

 必要に応じて「マニュアル」、「ルールブック」等を作成 し、労使双方がその理解を深めない限り、就業規則の役割は果たせないでしょう。

まとめ

いざ就業規則を作成しようと思っても、どこから手をつけたらいいのか迷われているかもしれません。

まずは、「何のために就業規則をつくるのか」を考えて下さい。

その上で、「何を明文化したいのか」を考え、肉付けしていけば独自の就業規則が完成します。

 

 

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