同一労働同一賃金って何?概要を説明します。

こんにちは。福岡市西区の社会保険労務士 吉田です。

前回は、「働き方改革実行計画」の目玉の一つ、「長時間労働の是正」についてお話しました。

今回は、前回の続きで、さらにハードルが高い目玉の一つ「同一労働同一賃金」について説明します。

本当に2019年4月に施行されるのか 働き方改革の概要

2017.06.30

「働き方改革」という名の下、一億総活躍社会の実現に向けて、女性も男性も、高齢者も若者も、障害や難病のある方も、一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現する

というゴールに向かって安倍内閣は、2016年度9月に担当大臣を含む関係閣僚と有識者15人から構成される「働き方改革実現会議」を設置し、10回にわたって議論してきました。

その目玉が「同一労働同一賃金」です。

同一労働同一賃金とは

同一の仕事(職種)に従事する労働者は皆、同一水準の賃金が支払われるべきだという概念。

性別、雇用形態(フルタイム、パートタイム、派遣社員など)、人種、宗教、国籍などに関係なく、労働の種類と量に基づいて賃金を支払う賃金政策のこと。

同一労働同一賃金の考えに至る背景

  • 非正規雇用労働者は、全雇用者の4割を占める
  • 30代半ば以降を中心に、子育て、介護等を背景とした時間や勤務地の制約等により非正規雇用を選択する者が多い
  • 正規、非正規間の賃金、福利厚生等の待遇格差は、若い世代への結婚、出産への影響を与え少子化への一要因となるとともに、将来にわたり社会全体への影響を及ぼすことになる。
  • 非正規労働者が増加することは、労働生産性向上の隘路ともなりかねない。

という背景があるようです。

同一労働同一賃金が目指す内容

では具体的に、同一労働同一賃金とは、どのような内容を指すのでしょうか。

同一労働同一賃金ガイドライン案には、次のように記載されています。

(目的)

正規化非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものである。同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。

 

分かるようで分からない・・・

基本的には、同じ仕事をしているのであれば、賃金も時給換算で同一にしたり、各種手当もその性質に応じて非正規労働者にも支払うようにしなさいという理解になります。

均等・均衡待遇がポイント

均等とは・・・

 前提条件が同じ場合、平等で差がないこと 

均衡とは・・・

 前提条件が違う場合、その前提に応じてバランスが取れていること 

 

均等は、単純で分かりやすいのですが、 正規労働者と非正規労働者の賃金や福利厚生の均衡状態を客観的に見て合理的に説明できなければならないということになります。 

同一労働同一賃金ガイドライン案には、

「無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者又はパートタイム労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的説明では足りない

と明記されています。

 

基本給の同一労働同一賃金とは

基本給を決定する際、年齢であったり、その労働者の能力であったりと、その会社の賃金制度にもとづいて決定されていると思います。

基本給を職業経験や能力に応じて支給する場合

正規雇用労働者と同一の職業経験、能力を蓄積している非正規雇用労働者には、その職業経験や能力に応じた部分につき同一の基本給を支給しなければならない。

さらには、蓄積している職業経験、能力に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給をしなければならない。

とされています。

基本給を業績や成果に応じて支給する場合

業績や成果に応じて支給する場合も同様です。

正規雇用労働者と同一の業績や成果を出している非正規雇用労働者には、その業績や成果に応じた部分につき同一の基本給を支給しなければならない。

業績や成果に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給をしなければならない。

とされています。

その他、勤続年数や職務に応じて支給する場合

その他、勤続年数や職務に応じて支給する場合も同様です。

正規雇用労働者と同一の勤続年数や職務である非正規雇用労働者には、その勤続年数や職務に応じた部分につき同一の基本給を支給しなければならない。

勤続年数や職務に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給をしなければならない。

 

要は、基本給を支給する場合に、どの要素に応じて支給しているのか

その 支給要素に応じて、正規・非正規関係なく均等、均衡に支給しましょう! とういうことになります。

が、非正規職員は職種限定であったり、地域限定であったりするため、その部分を正規職員との差と考える場合、

 その差に応じたバランスが客観的に見て妥当が合理性があるかが判断のポイント となります。

賞与、手当や福利厚生の同一労働同一賃金とは

賞与や手当、福利厚生も考え方は同様です。

賞与や手当、福利厚生を支給する目的、どのような意味合いを持ったモノなのかを考える必要があります。

賞与の同一労働同一賃金を考える

賞与の支給の目的は、

会社の業績等への貢献に応じて支給することが多いと思います。

なので、正社員には貢献度に応じて支給しているのに、非正規には「寸志」や「全員一律」などの支給では、辻褄があいません。

非正規職員に対しても、貢献度に応じて支給する必要があります。

手当の同一労働同一賃金を考える

手当についても同様です。

その手当を支給する目的が何なのかを考える必要があります。

例えば、家族手当

この意図は生活補助的な意図があり、扶養している子供がいたりする場合に支給される事が多いと思います。

非正規職員の場合でも、扶養する子供がいるなら支給してあげなければならないということになります。

 

次に、精皆勤手当

この意図はシフト制に穴を開けずに、頑張って出勤してくれた、仕事に励んでくれたことに対して支給されるものです。

非正規職員だから支給しないという訳にはいかないようです。

 

食事手当特殊勤務手当

食事手当は、労働中に食事時間をが含まれており、その食事の負担を補助する目的であるといえます。

非正規職員の場合も、勤務の間に食事時間が含まれる場合は、支給する必要があります。

特殊勤務手当は、業務の特殊性、危険度、作業環境に応じて支給される手当です。

非正規職員が同様の特殊業務に従事する場合は、支給する必要があります。

福利厚生の同一労働同一賃金を考える

休憩室や更衣室などの福利厚生施設

非正規職員だからという理由で利用に制限を設けることはできません。

しかしながら広さや設置場所の物理的な制限によって全員に利用させる事が不可能という事業所もあるかと思います。

が、何かしらの対策を検討する必要があるようです。

慶弔休暇

慶弔休暇の趣旨からしても、正規・非正規関係なく慶弔事は発生します。

非正規だから付与しないということはできません。しかし、週3日勤務の非正規の場合、勤務日の振替ができるのであれば慶弔休暇を与えなくても良いようです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。かなりハードルが高い事が分かります。

この間、 昇給を行わずに名ばかりの手当を支給して見せかけの賃金を上げてきた事業所にとっては、とても悩ましい課題 であるといえます。

さらに、今回の法改正については政府としては本気のようで、通常であれば法案が可決された後に指針やガイドラインを作成するのですが、今回に限っては、施行日を2019年4月に決めたため、

2016年12月、先にガイドライン案から発表し、2017年12月に法案を通す予定です。

また、2016年12月にガイドライン案を発表した理由は、法令を施行するまでの2017年3月、2018年3月、2019年3月の春闘で労使が話し合える機会を3回設けますという意図があるようです。

まだまだ先の話と安易に考えていると取り返しのつかない事になるかもしれません。

 

 

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