9割の労働者が知らない、労働協約と労使協定について

従業員が10人以上になると就業規則を作成し、労働基準監督署に届出なければなりません。

総務等の部署に所属しているか、労働組合に所属していれば「労働協約」や「労使協定」という言葉を聞いたことぐらいはあるかと思います。

しかし、それぞれの適用範囲や締結されている内容などを理解されている方は少ないのではないでしょうか?

労働協約とは

労働協約とは、労働組合と使用者との間で組合員の賃金、労働時間、休 日・休暇等の労働条件並びに労働組合と使用者との関係に関する事項につ いて団体交渉を行い、その結果、労使間で合意に達した事項を①書面において、 ②労使双方が署名又は記名押印したものをいいます。

少し分かりにくいので一つづつ解説します。

成立要件

  1. 書面であること
  2. 労働組合と会社が双方で署名または記名押印すること

労働協約の有効期間は、上限が3年と規制されています。3年をこえる期間の定めは、3年の期間を定めたものとみなされます(労組法15条)。

適用範囲

労働協約は、労働組合と会社が締結しますので、

基本的に、その労働組合に所属する組合員に適用されます。

が、労働組合法では労働協約に対して一般的拘束力効力を付与しています。

労働組合法における一般的拘束力効力とは、

一つの工場や事業所において、同種の労働者の4分の3以上が一つの労働協約の適用を受ける場合、残りの同種の労働者も当該労働協約の適用を受けるという効力をいいます。

あくまで、工場や事業所単位ですから、企業全体を「4分の3」の計算の対象とすることはできません。

また、「同種の労働者」とは、正社員やパートといった働き方だけで一概には判断できず、ケースバイケースで判断すべきでしょう。

しかも、労働組合に属していない4分の1の労働者で新たな労働組合を結成した場合、この新たな労働組合に属する4分の1の労働者には適用されなくなります。

内容について

就業規則は労働者代表の意見を聴くとしても、基本的には使用者が定めたものです。

一方、労働協約は労使の合意に基づいて締結されるものである点において、基本的な違いがあります。

労働協約の主要な機能は、

労働条件の基準を定めること

です。すなわち、「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」を定めた労働協約については、これに反する労働契約の定めはその部分については無効となり、無効となった部分は労働協約の基準がこれに代わることとされています。

しかも「労働契約に定めがない場合」も同様とされていますので、結局、労働協約の「労働者の待遇」に関する定めはそのまま労働契約上の合意と同じ意義を有するということになります。

労使協定とは

労使協定とは、「労働者と使用者との間で、労働条件などについて特別に取り決める協定」のことさします。

労使協定を締結することにより、労働基準法上で原則禁止されている事項を例外的に認めることができます。

労使協定は、「締結」が効力発生の要件のものと、締結後、「労働基準監督署へ届け出る」ことにより効力が発生するものがあります。

労働協約とは異なり、事業場の全従業員と間で効力を持ちます。

成立要件

  • 書面であること
  • 労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者との間で署名または記名押印すること

労働者の過半数を代表する者とは・・・

以下のいずれにも該当する者でなければなりません。

  1. 労基法に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
  2. 投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者である

なお、労働者には、

  1. 労基法に規定する監督又は管理の地位にある者
  2. パートやアルバイト

などを含みます。

適用範囲

労働協約とは異なり、その事業場に属する全労働者に適用されます。

「事業所」単位で締結されるので、本社や支店がある場合は、個々に締結しと届出が必要となります。

内容について

以下に、労働基準法で規定されている労使協定について記載します。太字は、労働基準監督署長への届出が必要となる労使協定です。

  1. 労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合(労働基準法第18条)
  2. 賃金から法定控除以外にものを控除する場合(労働基準法第24条)
  3. 1ヶ月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)
  4. フレックスタイム制(労働基準法第32条の3)
  5. 1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4、第32条4の2、施行規則第12条の2、第12条の4、第12条の6)
  6. 1週間単位の非定型的変形労働時間制(労働基準法第32条の5)
  7. 休憩の一斉付与の例外(労働基準法第34条)
  8. 時間外労働・休日労働(労働基準法第36条、第133条、施行規則第69条。いわゆる36協定
  9. 割増賃金に代えて代替休暇を取得する場合(労働基準法第37条第3項)
  10. 事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法第38条の2。事業場外労働が法定労働時間内の場合は不要)
  11. 専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)
  12. 年次有給休暇の時間単位付与(労働基準法第39条第4項)
  13. 年次有給休暇の計画的付与(労働基準法第39条第6項、第135条)
  14. 年次有給休暇の賃金を健康保険法に定める標準報酬日額で支払う場合(労働基準法第39条第7項)

労使協定は原則「締結」することで効力が発生しますが、36協定については届出も要件の一つとなっているので注意が必要です。

このほか、育児・介護休業法や雇用保険法、賃金支払確保法などにも労使協定によるさまざまな措置が規定されています。

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