未払い残業代請求のリスクを下げる 請求される前に対策が必要

こんにちは。福岡市西区の元SE×社会保険労務士の吉田です。

昨今、未払い残業代請求の代行業者や弁護士が多くなっているのをご存知でしょうか??

なぜ今、未払い残業代請求なのでしょうか!?

未払い残業代請求バブルの到来!?なぜ今、未払い残業代請求なのか・・・

2017.07.13

未払い残業代請求のリスクが内在することは、企業、組織にとってすごく恐ろしいことであることを、まずは理解して下さい。

 

未払い残業代請求の多い業界

やはり、運送業が多いようです。

ヤマト運輸が未払い残業代の支払いを決めました。額にして運転手6万人に対して約230億円です。

聞くところによると、ヤマト運輸の従業員個人からの請求、内容証明の送付、訴訟の数がドンドン増え、対応に苦慮するため全員に支払うことを決めたと聞きます。

 

医師などの高額所得者も残業代支払いの対象となる

2017年7月7日、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は、

 「残業代と基本給を区別できない場合は残業代が支払われたとは言えない」 として無効と判断し、2審・東京高裁判決の残業代に関する部分を破棄し、未払い分を計算させるために審理を同高裁に差し戻した

 

この最高裁判決は今後の未払い残業代訴訟の基礎となりえます。

要は、「基本給と残業代を区別できるようにきちんと分けなさい」ということなのです。暗黙の了解で、残業代込みで多めに支払っているではダメなのです。

 

未払い残業代有無の確認

まずは、現状把握が必要です。

あなたの会社は、どのように残業代計算をしているでしょうか!?

すべての残業に対する対価を支払っていますか!?

割増率は間違っていませんか!?

定額残業代を導入している場合は、就業規則や雇用契約書に必要事項を明記していますか!?

 

そもそも残業代自体を支払っていない場合は、早急に対策が必要です。

「残業代込で毎月多めに支払っているから大丈夫」と言われることがありますが、

定額残業代を導入し、正確に運用するには、就業規則への明記や雇用契約書への明記等が必要になります。

 

まずは勤務時間の把握から

事業所によっては、タイムカードのような勤務時間を把握する方法を持たない事業所が多くあります。

これは大変危険なことで、今の時代スマホのアプリ等で従業員自身が簡単に勤務時間を記録することが出来るのです。しかもGPS機能を活用すれば、いつからいつまで何処に居たのかも分かるので、信憑性が増します。

何が言いたいかというと、未払い残業代請求で訴えられた時に、従業員が毎日2年間コツコツとスマホのアプリを活用して記録を付けていたら、それ自体が証明になるのです。

勤怠管理は使用者の義務です。

まずは勤怠管理を出来る体制を整備しましょう!

定額残業代を導入する

残業代の支払いが出来ないということであれば、定額残業代を導入する方法があります。

定額残業代の支払い方法

 定額残業代は、「基本給組込型」と「手当型」に分類することが出来ます 

「基本給組込型」は、基本給の中に定額の残業代が含まれていると考える方法です。

この場合、基本給部分と残業代部分の区分が曖昧になるという問題が発生するため、多くの判例で無効とみなされるケースが多くなっています。

 

「手当型」は、時間外手当として毎月定額を支払う方法です。

この方法では、基本給部分と残業代部分とが明確に区分されるため、実務上は「手当型」を導入するのが無難と考えます。

定額残業代の内容

次に、何時間分の残業代を毎月支払うかという点ですが、

ザ・ウインザー・ホテルズインターナショナル事件を参照していただくと分かるように、上限45時間以内が妥当だと考えます。

しかし、実態として20時間の残業しかしないのに、45時間分も支払っていると25時間分の残業代を多く支払っているということになります。

とは言っても、20時間ギリギリの定額残業代を導入すると、もし超えた際の精算が手間になりますので、実態に応じて、超えることがないような時間を導入することをオススメします。

就業規則上の記載方法

就業規則を改定し、現在の給与には◯◯円分の残業代が含まれているという運用に変更します。

具体的には、

「◯◯円を定額残業代として支払う。なお、定額残業代を超えた残業が認められた場合は、会社はその差額を精算の上支払う。」

という差額支払いの合意を明確にした規定を設けるべきです。

規定する際に、残業代の金額で表現するか、残業時間の時間数で表現するかという事が考えられます。

もし時間数で表現する場合、計算式を示し、定額残業代部分を明らかにし、残業代の差額がある場合にその金額が明らかになる必要があります。

また、定額残業代が何に対する対価なのかを明確にする必要があります。休日出勤分の割増なのか、深夜残業の割増なのか・・・。

定額残業代を導入後、 基本給に当たる部分を時間給に換算した時に最低賃金を下回らないよう注意 することが必要です。

もちろん、運用を変更するということは、就業規則の不利益変更につながるので、従業員の同意が必要になりますし、合理的な内容でなければなりません。

しかも、運用を変更する前に発生している未払い残業代については、請求されれば支払う必要がありますので注意して下さい。2年の時効が成立するのを待つしかありません。

最後に

過去の未払い残業代の支払い、定額残業代の有効性を判断する裁判では、様々な判決が下されています。

定額残業代を有効に運用するポイントとしては、

  • 就業規則や雇用契約書への明記
  • 基本給と定額残業代を区別して明記すること
  • 定額の残業時間を超えた場合は、超えた分の残業代を支払うこと

が求められているようです。

上記が守られていないと、定額残業制の運用は無効とされます。

無効とみなされると、支払っている給与は全て基本給とみなされ、残業代の算定基礎額が大幅に膨れ上がります。

少しでも、「大丈夫かな??」と感じた方は早急に見直しが必要かもしれません。

 

 

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