こんにちは。福岡市西区の元SE×社会保険労務士の吉田です。
今回は、残業代対策として多くの企業?というより、中小企業に導入されている「定額残業代」について、考察してみましょう!
目次
定額残業代とは
手当として、あらかじめ一定時間分の残業代を支給する方法です。
基本給に組込む方法と業務手当、管理職手当などの名称で手当として支給する方法があります。
定額残業代制の大きな勘違い
定額残業代制を導入する目的の中で一番多いのが
- 残業代を削減できる
- 事務作業の負担を軽減できる
と考えられて導入されるケースが多いようです。
本当にそうでしょうか!?
「定額残業代制」は、基本的に見込の残業時間を考慮した手当を支払う制度です。
月20時間の残業を見込んで、10万円の定額残業代とした場合
月20時間までは、別途残業代は発生しませんが、
20時間を超えた分は、別途残業代を支払う必要があります。
※ 多く残業代を支払うことがあっても、残業代を少なくすることは出来ません。
また、「事務作業の負担を軽減できる」と思われている場合もありますが、
上記の例のように、 見込の残業時間を超過した場合、別途残業代計算が必要 となるので
確実に軽減できるとは限りません。
労働者のイメージは?
それでは、労働者側から見た「定額残業代制」のイメージはどうでしょうか!?
前段で記載したように、経営者側が
- 残業代を削減できる
と感じているように、労働者側も
- 残業代を減らされている
- いくら働いても同じ給料
というように、誤った悪いイメージがついています。
インターネットが普及した昨今、この悪いイメージを払拭するのは難しいかもしれません。
定額残業代制を導入されている企業は、採用活動の際に丁寧に、十分な説明をする必要があるかもしれません!
本来の目的は?
では、「定額残業代制」の本来の目的は何でしょうか?
残業代を含めて人件費を予算化できる
従業員が5人いて、人件費の予算として150万円/月 しか確保できない場合、
基本給を250,000円(8時間×20日勤務)、見込残業時間を25時間とした時に、
残業代は、25万円÷160H×1.25×25H=48,829円
となります。
よって、定額残業代を50,000円(法定外残業時間:25時間)としてしまえば、
人件費:30万円/人
と簡単に予算化することが可能です。
事務作業を軽減できる
ここで重要なのは、 見込の残業時間を設定する際に、実働の残業時間が見込を超過しないように設定する ということです。
実働が見込を超えてしまうと、別途残業代計算を行う必要があり、事務作業が軽減できません。
定額残業代制を導入する際のポイント
定額分の残業時間数を明確にしていること
定額残業代として支払う額が、何時間分の残業に相当するのかを明確にする必要があります。
休日出勤手当や深夜手当も含めることはできますが、それぞれの時間数を明確にしていることが条件となります。
正確に残業代単価が計算されていること
残業代単価の計算が間違っていると、未払残業代が発生することにもつながります。
未払残業代は、裁判所の命令で付加金として残業代と同額の支払いを求められる ことがありますので、注意が必要です。基本給部分が最低賃金を割っていないか
定額残業代を多く設定することで、基本給を少なく設定する場合があります。
基本給を所定労働時間で割って時給に換算した時に、最低賃金を割ってしまったという事も多々あります。
注意して下さい。
実際の残業時間が見込残業時間を超えた場合の対応について
就業規則等に「残業代の差額を支給する」旨を明示することが求められています。
また、定額残業代を導入しても、差額が発生していないかのチェックは毎月行わなければいけません。
規定だけあっても、運用が形骸化していると、否認されるリスクが増大します。
まとめ
「定額残業代制」は多くの経営者より質問される事項でもあります。
経営者が興味があるように、労働者も興味があります。
もちろん、上手く運用すれば、 人件費を増やさずに、業務量を削減させ、従業員の士気を高めることが出来る制度 でもあります。
本来の目的を間違えると、従業員の士気は下がりますので、注意して下さい!
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