部長・・・
いわゆる、管理監督者は残業代を支払わなくてもいいと労働基準法上解されています。
「だから、いつも部長はサッサと早く帰宅するんだな・・・」
こんにちは。福岡で開業した元SE×社会保険労務士の吉田です。
部長が、いつも早く帰宅する理由はさておき、今回は、管理者の時間外労働について解説します。
労働時間、休憩、休日の適用除外
労働基準法では、
労働時間について、1日8時間、1週40時間を超えてはならない。
休憩時間について、1日の労働が6時間を超えた場合は45分以上、8時間を超えた場合は60分以上の休憩を与えなければならない。
休日については、毎週少なくとも1回、4週間を通じ4日以上の休日を与えなければならない。
としています。
ただし、上記の 労働時間、休憩、休日の原則は次の者には適用しない とされています。
- 農業、畜産、水産の事業に従事する者
- 事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱うもの
- 監視または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者
この2点目の 「監督もしくは管理の地位にある者」というのが管理監督者に該当 するのです。
管理監督者とは
ここでよく問題となるのが、「部長や課長などの役職名だけで、管理監督者と判断できるのか?」ということです。
管理監督者とは・・・
一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務形態など実態に即し、賃金等の待遇面についても留意しつつ、総合的に判断する(基監発第0401001号)
とされています。
経営者と一体的な立場にあるか
管理監督者は経営者に代わって一定の指揮命令、責任と権限を委ねられ、重要な職務を任されていることが必要となります。
具体的には、
- 職務内容や権限が事業運営上重要な事項に及ぶか
- 経営計画・予算案などの事業経営に関する決定過程に関与しているか
- 部下の勤怠管理や、スケジュール管理など、従業員の労務管理に関与しているか
これらに該当すれば、概ね「管理監督者」と判断されるべきだと考えます。
日本マクドナルド判決(東京地判平成20年1月28日)では、
店長は「店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかである」が、「職務、権限は店舗内の事項に限られるのであって、企業経営上の必要から、経営者と一体的な立場において」、「重要な職務と権限を付与されているとは認められない」と判示されました。
この判例をみるに、 管理監督者とは企業全体としての事業運営への関与を行う者 であると判断できます。
出社や退社時間など裁量が与えられているか
経営において重要な決定、判断、対応を任されているのであれば、一般の従業員と同様に、午前9時に出社して午後18時に帰宅するとはならないのではないでしょうか。
その時その時の業務に応じて、出退勤時間が異なり、毎日の出退勤時間は厳密に決められません。
また、タイムカードなどで勤怠管理が行われ、遅刻や早退により賃金の減額があるようでは、裁量が与えられるとは言えません。
賃金等の待遇面で配慮されているか
管理監督者が「経営者と一体となった立場」である以上、賃金等の待遇面で配慮されている必要があります。
- 残業代の代わりとしての役職手当となっていないか
- 役職に合った対価となっているか
- 他の労働者との賃金差はどのぐらいあるのか
など、上記の内容を踏まえ「待遇面で配慮されているか」を判断する必要があります。
まとめ
管理監督者が、労働時間・休憩・休日の原則について適用除外となった理由は、
- 労働条件を自ら決定できる立場である
- 出退勤に裁量を持ち
- それなりに賃金等で保障されている
という理由により、自ら残業をするのか等の労働条件に裁量を持っているからなのです。
「部長」や「工場長」、「店長」だからと言って判断するのは危険ですのでご注意下さい。
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