平成27年9月30日から改正労働者派遣法が施行され、日本の派遣制度が始まって依頼の根本的なルール変更となり、経営や実務に与える影響が極めて大きな改正となっています。
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労働者派遣事業の許可制への一本化
いわゆる「特定労働者派遣事業の廃止」と呼ばれる今回の改正の目玉です。
改正前の派遣制度は、許可制の一般労働者派遣事業と、届出制の特定労働者派遣事業の2種類 でした。特定労働者派遣事業は届出制であるため、問題のある悪質な業者も簡単に事業として派遣を行えたという事実があります。
それらを取り締まるために、許可制に一本化したと考えることが出来るわけです。
54,000程度の事業者が特定派遣事業の届出を行っており、要件をクリアすることができず、一般労働者派遣事業の許可を取得することが出来る事業所は20,000程度になるのではという予測もあります。
平成27年9月30日の施行日時点で、届出により特定労働者派遣事業を営んでいる事業所は、平成 30 年9月 29 日まで、引き続き特定労働者派遣事業を営むことが可能です。
が、
その後も派遣事業を継続させる場合は、一般労働者派遣事業の許可を得なければならないのです。労働者派遣の期間制限の見直し
改正前は、いわゆる「26業務」への労働者派遣は期間制限が設けられておりませんでしたが、今回の改正により、それらが廃止されました。
そして、派遣労働者が無期雇用か有期雇用かによって期間制限のルールが根本的に変わりました。
無期雇用の場合、前の26業務にかかわらず、すべての業務において3年を超えて派遣させることが可能になりました。
有期雇用の場合は、「派遣労働者単位」と「派遣先単位」の2つのルールが新たに設けられ、基本的には3年を限度に派遣が可能となりました。
キャリアアップ措置
平成27年の改正により、派遣元事業主に対してキャリアアップ措置の実施が義務付けられ、派遣先についても、派遣労働者の業務遂行状況等の情報提供および派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知が規定されています。
派遣元事業主は、雇用している派遣労働者のキャリアアップを図るため、次を実施する義務があります。
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- 段階的かつ体系的な教育訓練
- 希望者に対するキャリア・コンサルティング
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キャリア形成支援制度では、相談窓口を設置しなければなりません。
相談窓口の担当者は、資格が必要なもので はなく、キャリア・コンサルティングの知見を有することが求められます。
均衡待遇の推進
派遣労働者と、派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、 派遣元事業主と派遣先それぞれに、求められています。
平成27年改正で、旧法で求められていた事項に加えて、派遣労働者に対する説明事項、派遣先による一定の教育訓練・福利厚生施設の利用・情報提供等の配慮義務の追加等がなされています。
派遣元が講ずべき措置
均衡を考慮した待遇の確保
派遣元事業主は、派遣先で同種の業務に従事する労働者との均衡を考慮しなが ら、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生の実施を行うよう配慮する義務があ ります。
待遇に関する事項等の説明
派遣労働者が希望する場合には、派遣元事業主は、上記の待遇の確保のために 考慮した内容を、本人に説明する義務があります。 派遣元事業主は、派遣労働者が説明を求めたことを理由として不利益な取扱い をしてはなりません。
通勤手当の支給に関する留意点
派遣元事業主に無期雇用される労働者と有期雇用される派遣労働者との間に おける、通勤手当の支給に関する労働条件の相違は、労働契約法第 20 条に基づ き、働き方の実態や、その他の事情を考慮して不合理と認められるものであって はなりません。
派遣先が講ずべき措置
賃金水準の情報提供の配慮義務
派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者の賃金を適切に決定できるよう、必要な 情報を提供するよう配慮しなければなりません。
必要な情報とは、例えば・・・
- 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準
- 派遣労働者と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準(賃金相場)
- 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の募集時の求人条件等
教育訓練の実施に関する配慮義務
派遣先は、派遣先の労働者に対し業務と密接に関連した教育訓練を実施する場合、派遣元事業主から求めがあったときは、派遣元事業主で実施可能な場合を除き、派遣労働者に対してもこれを実施するよう配慮しなければなりません。
福利厚生施設の利用に関する配慮義務
派遣先は、派遣先の労働者が利用する次の福利厚生施設については、派遣労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければなりません。
- 給食施設
- 休憩室
- 更衣室
派遣料金の額の決定に関する努力義務
派遣先は、派遣料金の額の決定に当たっては、派遣労働者の就業実態や労働市場の状況等を勘案し、派遣労働者の賃金水準が、派遣先で同種の業務に従事する 労働者の賃金水準と均衡の図られたものとなるよう努めなければなりません。
また、派遣先は、労働者派遣契約を更新する際の派遣料金の額の決定に当たっ ては、就業の実態や労働市場の状況等に加え、業務内容等や要求する技術水準の 変化を勘案するよう努めなければなりません。
労働契約申込みのみなし制度
派遣先が次に掲げる違法派遣を受け入れた場合、その時点で、 派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたもの とみなされます。 (派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ、知らなかったことに過失がな かったときを除きます。)
- 労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
- 無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
- 期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
- いわゆる偽装請負の場合
この制度はあくまで、派遣先の間接雇用から直接雇用への機会をあたえるものであり、労働条件の向上を意図したものではありません。